インデックス分散投資で海外ETFから流動性の低い国内ETFに本当に乗り換えるべきなのか

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 すごく久しぶりの投資に関する記事。

 私は資産の多くをインデックス分散投資で運用しており、その運用益でリタイア生活を成立させている。毎日株式市場を見るようなのは好きではないので、数ヶ月〜数年にポートフォリオのリバランスや配当金の再投資を行っている。

 今回、約1年半ぶりに、再投資のために国内ETFを購入しようとした。その際に表題の悩みにぶつかってしまったので、私的なまとめがてら記事にしておく。

 先に表題の結論を言っておくと「場合によってはまだ乗り換えるべきでは無い」と個人的に考えている。

【目 次】

海外ETFから国内ETF移行への背景

 世界的に分散して株式投資をする際のセオリー。それは米国上場のETFで世界株式投資を対象にしたものを売買することだった。VangardBLACKROCKのiSharesがこの手のETFの大手で、私はVangardのVT/VWOを使っていた。

 それがここ数年で国内でも世界分散投資が可能なETFが登場したため、インデックス投資ブロガーの間で海外発のETFから国内発のETFに移行すべきか議論が生まれた。結果としては多くが国内発のETFに移行したほうがいいんじゃなかろうか、という結論になった。リンクから彼らが乗り換えする背景を抜粋すると

  • 海外上場ETFの分配金二重課税を回避するための確定申告が面倒なこと
  • 米国の配当課税が流動的で、予測可能性が低下していること
  • マネックス証券で米国株の取引手数料が値下げされたこと
  • TOKの取引高が低く、流動性低下・上場廃止が懸念されること
  • VWOのベンチマークが変更され、韓国株式がポートフォリオが除外されてしまったこと
  • 上場MSCIコクサイ株(1680)と上場MSCIエマージング株(1681)の乖離率が低下しており、安定的な運用ができていること

 個人的な感想で言えば、たしかに海外税控除の確定申告はめんどくさい。その上私のような給与ほかの所得が無い人の場合、確定申告しても控除を受けられないというデメリットがあった。控除する収入がないんだからあたりまえではある。

 ここに記載されていない個人的なメリットとしては、国内発ETFを買えば為替の上下をETF価格が吸収してしまうので、売却時は分離課税分の税金(2015年10月現在2割)だけ考えれば良く、税処理に頭を悩ませずにすむところが非常に魅力的だった。米国発のETFを購入するにはドルで資金を用意する必要があり、売却時に為替差損を別に申告しなければならない。差益が出た場合は雑所得=総合課税されるため非常に厄介なわけだ。特に給与所得がある人が総合課税をされると累進課税によりかなりの税金を支払わなければならなくなる。これも回避できるものならしたい所だと思う。

 というわけで、私もこの流れにのり、まずはリバランスや追加投資分を国内発のETFで調達する事にした。具体的には

【海外ETF】
バンガード®・トータル・ワールド・ストックETF【VT】
バンガード®・FTSE・エマージング・マーケッツETF【VWO】

【国内ETF】
上場インデックスファンド海外先進国株式(MSCI-KOKUSAI) (1680)
上場インデックスファンド海外新興国株式(MSCIエマージング) (1681)
TOPIX連動型上場投資信託 (1306)

へ移行しようと考え、実際に行動に移すべく板を眺めていたところ、本当に国内初ETFに移行すべきか悩むことになってしまった。

MSCI-KOKUSAI(1680/1680)をはじめとする国内ETFの流動性の低さ

 とにかくMSCI-KOKUSAI/エマージングは流動性が低い。平日の板状況を貼り付けてみよう。

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 1680のある日の朝9時ごろの板情報。まず値が埋まっていないのでまともな取り引きができない。さらに板自体が小ぶり。この時の取り引き価格でいえば株数100というのは20万円くらいだ。そんな小さな板がポロポロと並んでいる。

 一日の出来高はというと

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 特別な大商いをのぞいて一日の出来高は1万〜2万株。取引額に換算すれば1680は1日とおして出来高が1000〜2000万円程度しか無い。たとえばあなたが国内ETF→海外ETFの乗り換えで200万円分購入しようとすれば、1日の取引量の1割が自分の取り引きになる。こんな状態で成り行き買いはできるはずもない。

 個人で数百万円を1日で取引するというのは全然非現実的では無いと思うのでこれには参った。

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 上場インデックスファンド海外新興国株式(MSCIエマージング) (1681)のほうはさらに薄商いになる。

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 TOPIXインデックスなんかは流動性にまったく問題がない。きちんと1円毎に板がずらっと並んでおり、頻繁に取り引きが成立する。個人のはんちゅうであれば欲しい時に欲しいだけ取り引きが出来るといっていいだろう。

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 海外ETFであるバンガード®・トータル・ワールド・ストックETF【VT】のこの時の1日の出来高は28万株。売買代金でいえば、約1.6億ドル。流動性についてはまったく問題がない。

問題点1: 非流動性のリスクプレミアムをもらえない

 流動性が低いことの第一の問題点は、自分が売りたい時に売れない、買いたい時に買えない事だ。たとえば今回500万円分の追加投資を1680を中心に行おうとしたが、板情報を見ていていったい何日細かく拾い続ければいいのかと軽い頭痛を覚えてしまった。

 もっと問題なのは、特別な事情でリタイア資金や個人年金を換金しなければならなくなった場合。数千万円という金額になることが多いだろう。そうなると1680/1681の流動性はかなり心もとない。

 流動性が低ければ一般的にその分だけリスク・プレミアムが貰えるのが金融の一般的な考え方だと思うが、ETFは指数に連動しているためそのプレミアムを得ることも出来ない。リスクだけを自分で請け負うハメになる。

問題点2: 自ら生み出す需給によるベンチマークインデックス指数との乖離

 投信は本来売買によって価格に影響を与えない。しかし、ETFは仕組み上売買によって一時的に価格に影響を与えてしまう。

 ETFはターゲットとしている指数と連動させるため、市場価格と指数に乖離が発生した場合、ETF発行体が反対売買を行って価格を調整する。日興アセットマネジメントのこちらのページがわかりやすい。

 と机上で考えれば、乖離は発生しないわけだが、現実はそうではない。

 オペレーションは見たことがないので実際のところは私にはわからないが、水瀬ケンイチさんのETF価格乖離定期レポートを見る限り、毎日乖離を調整しているようには見えない。週ペースくらいで合うように調整しているように見える。他の記事では最短二日のタイムラグがあるとも読み取れる。

 これを逆から考えると、特定の個人が1680/1681に数日間など短期間で数千万円の売買を行った場合、一時的にかなりの乖離が発生する事になるんじゃないだろうか。指数と乖離したぶんは基本的に自分の損として帰ってくる。

 もしかしたら裁定取引があさっての方向から飛んで来て傷が浅くなるかもしれないが、そんな事をあてにして自分の年金資産などをまとめて1680/1681、および同様の出来高の少ない国内ETFに突っ込んでおくのは怖すぎる。

 というわけで、資産の構築を初めて間もなく資産規模が数十万〜数百万円であれば国内発の世界分散投資ETF、MSCIコクサイやMSCIエマージングを中心に運用するのはまったく問題無いが、資産形成の後半や大きめの資産を運用する場合、国内発ETFを中心に運用するのはまだまだ時期尚早なんではないだろうか。

 もしくは維持費が少し割高になるが、インデックス国内投信で保有しておく事もこの状態では視野に入ってくる。

 個人的には使いたくても使えない。それが国内発ETFだ。利己的な理由でインデックス分散投資がもっと広まって欲しいと今回のことで初めて思った。せめて出来高が10倍くらいにはなってほしい。

 最近は手数料の安さからETF推し一本槍みたいな流れなので、私は今一度インデックス・ファンドのほうも再考してみようと思う。結果スルーしてしまいそうな気はしているが…。

 誤りがあったら是非お知らせいただきたい。

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