2014年末の日記

12月24日(水)

朝8時起床。NHK朝の連続テレビ小説「マッサン」を見ながら朝食を食べるのが、我が家の習わし。夫婦2人、どちらも無職だ。朝食の目玉焼きとトーストはだいたい僕が作る。一般的なイメージに反して、セミリタイア者は規則正しい。なぜなら、前日に片付けないといけない事はないし、日が登る前に起きる必要も、また皆無だからだ。健康的な心身が自動的に手に入る。

クリスマスイブなので、夫婦で出かける支度をする。といっても、デートではないから準備はあっという間。無精髭とすっぴんは、その辺にあるものを適当に引っ掛ける。タイミングを見計らって10時の開店に間に合うように近くのスーパーへ車を走らせる。手作りケーキを2人で作るため、品薄な無塩バターが必要なのだ。首尾よく手に入れ、1,000円足らずの赤ワインもついでに買った。

夜、今年の10大ニュースなんて記事をみる。災害は今年も多かった。

12月25日(木)

お昼は昨日のディナーで出た手作りミートローフ。妻は、それに加えて自作のケーキを1/4ホール平らげた。午後からの大掃除に向けて、エネルギーが必要だった。午前中にホームセンターで調達した武器が、台所で開戦を待っている。攻略すべき敵の本丸は勿論、ガスコンロだ。

ガスコンロを一定のリズムで擦りながら妻が歌う。レリゴー、レリゴー。

彼女は、結婚した翌年に僕が「会社を人に譲って仕事を辞めようと思う」と言っても、何も聞かずに「いいよ」と返事ができる胆力の持ち主だ。金の魔力にもまったく影響されない。ディールが全部済んだ後に「何故上手くいっている会社を手放すんだ」と裏で彼女の周囲から大反対されていた事を教えてくれた。

夜、今年亡くなった著名人一覧という記事をみる。偉大な人が多く無くなった年だった。

12月26日(金)

今日は多少忙しい。年の終わりまで最終週を残すだけとなった。明日から、世間的には年末年始休暇に突入する。無職な僕達は、人々を避けるべく、一足先に用事を片付ける。買い出し・銀行・図書館。

妻が銀行で手続きをしている間、自然に顔がほころんでいる自分に気がついた。何故だろう。

セミリタイア者にも不安が無いわけではない。金銭的に余裕があろうと、心配の形が変わるだけだ。両親の事・資産管理の事・健康のこと。ほとんど同じだと言って差し支えがない。

僕の表情は変わり、今や眉間にシワを寄せ口はへの字になっていた。その表情のまま数分ほど答えを探し続けていると、妻がコートの前を抑えながら小走りに駆け戻ってきた。両目は三日月のように細く・口元はほころんでいる。数分前の僕と同じだ。試しに、車に滑りこんだ妻に「何が面白いの?」と聞いてみる

「寒っ! あっ今日のご飯何にしようかと思って!」

「それの何がそんなに面白いの?」

「作りたいものを考えて、素材を自分で選んで、時間じっくりかけてつくって。そうやって考えてたら普通ニヤニヤしちゃうじゃない!?」

なるほどと僕は思った。失礼な言い方だが彼女は今日の晩御飯の事しか考えていない。それは過去の思い出でもないし、未来の不安や葛藤でもなく、今。人間は今と向き合っている時だけ、幸福を感じるんだ。趣味に没頭している時、宿題が終わった時、勝利した時、子供の誕生。帰納的に考えれば、今だ。

僕らは不安や悩みがあると不幸になると考えがちだけど、それは違う。今にフォーカスして、フォーカスの外に不安を押し出すのが幸せになる秘訣なんじゃないだろうか。

この週末から休暇に入った多忙な人達は、まず行事と自身の回復に大半の時間を割かれる。

そして回復した後、彼らは残念ながら未来を思考する。スピードが早すぎて今に留まる事が出来無い。数年前の僕がそうだった事をようやく思い出す。選択肢はあるように見えてその実無かった。残った時間は全て未来に、仕事や人生の様々な困難や苦悩を解決するために割り当てられた。未来のために休日の一秒が一粒の金と等価になっていた。今日の献立に大金を支払うのは難しかった。

ありがたいことに、僕は今自由に選択でき時間が使える。幸福の源泉は再び水をたたえ、今を感じ僕に笑顔をもたらしてくれる。

今にフォーカスする。今を生きる。…結局今年はこの言葉だった。何度目か目頭が熱くなるのを覚える。じわりとほてったまぶたの裏に、彼の、ロビンウィリアムスの、教壇に土足でたった姿が今でも鮮明に蘇ってくる

「若者よ、今を生きろ。その手で人生を掴み取れ!」

おお、キャプテン、マイキャプテン。やっぱりあなたが正しかった。

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